★何が癒しの音楽なのだろう。
上田紀行(文化人類学者・東京工業大学助教授) (前略)
そして磯田邸を訪れて驚いた。家自体が楽器というか、吹き抜けのドームになっている。そしてそこで奏でられたクリスタルボウルの音響にぼくは驚いた。それはまさに「音響」であって、音以外の何もない。旋律もないし、仕掛けもない。クリスタルでできた鉢を叩いたりこすったりの音のみがその場に満ちるのである。
しかし、まさにその音の響きの深さと精妙さはいかばかりだろう。
何も足さない、何も引かない。そんな音響の中で、私自身もまた、何も足さない、何も引かない自分自身になっていく。それは手垢の付いた「ヒーリング」の地へと引っ張っていこうとする音楽とはまったく別種のものだ。ただ音がそこにあるだけ。そしてただそこに自分がいるだけ。
なんという体験だろう。(後略) 「倍音浴」解説書より
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