万歩計日和
文/写真・mizugame
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14.03.13(木)
始まりの終わり。(3,458歩)

この一ヶ月で癒やしとは何かということにまた一歩近づけたので、ここでちょっと癒やしと音楽についてのぼくの軌跡を整理してみよう。

1980年代初頭、ロックにもジャズにも飽きていたぼくはウィンダム・ヒル・レコードの音楽に魅了され、ニューエイジ・ミュージックを聴き漁った。

ウィンダム・ヒルの大スター、ジョージ・ウィンストンの演奏を聞いたキース・ジャレットは、オレの演奏を物真似したコマーシャルな音楽さと苦々しく言い放ち、口うるさいジャズ・ファンは彼らをコマーシャャリズムに毒されたECMと評した。

ぼくはジョージ・ウィンストン、ウイリアム・アッカーマン、アレックス・シ・デグラッシ、タック&パティ、マーク・アイシャム、マイケル・ヘッジスなどの演奏がお気に入りだった。

その後、今まで浴びるように聴いてきたジャズやロックには感じられなかった瑞々しい音の響きを持っているエンヤ、グレゴリアン聖歌などに導かれて音楽と癒やしの関係に興味を持ち始めた。

次々に登場する美しい音たちを追い求めながらも頭の中で幾つものクエスチョンマークが飛び交っていた。

音が人を癒やすとはどういうことなのだろう?

音の要素の何が人を癒やすのだろう?

そもそも、癒やすとはどういうことなの?

癒やしとは何かということを最初に分かりやすく説明してくれたのは文化人類学者の上田紀行さん。
上田さんのデビュー作「覚醒のネットワーク」(カタツムリ社)と「スリランカの悪魔祓い」(徳間書店)の二冊の本には癒やしの意味が語られていた。
1990年のことだ。

二年半スリランカに滞在して現地の呪術師たちが病気を治す様子を間近に観察した上田さんが、自分を、人を、世界を癒やすとはどういうことなのかをレポートした「スリランカの悪魔祓い」を95年に読んだぼくは奥付に年間ベスト1の本だと記した。

エンヤの「オリノコ・フロウ」(88年)、「グレゴリアンチャント」(93年)、ヤン・ガルバレイクの「オフィチウム」(94年)などが全世界で大ヒットし、ヒーリング・ミュージック・ブームが始まり、次々に発売された癒やしというレッテルの貼られた音楽にぼくは懐疑的だった。
BGM、イージー・リスニングと名付けられていた類の音楽を、時代のキーワード"癒やし"という名札に付け替えて「ヘイお待ち!ヒーリング・ミュージックでござい」と出された気分。

上田さんは上記二冊の本を通して「癒やしとは世界とつながるということだ」と教えてくれた。

その頃ジャズ・ピアニストの山下洋輔さんを通してぼくはクラシックの世界に踏み込むことになる。

高校一年からジャズを聴き始めたぼくはすぐにフリー・ジャズに傾倒した。
オーネット・コールマン、ドン・チェリー、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、アルバート・アイラー、ジョン・コルトレーン、エリック・ドルフィー、セシル・テイラー、アーチー・シェップ、グローブ・ユニティ・オーケストラ、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ、ペーター・ブロッツマン、ハン・ベニンクなどなどなどなどの音の洪水を渋谷・新宿のジャズ喫茶で毎日浴び続けていた。
そんな時代に武田和命、吉沢元治、富樫雅彦達と演奏している山下洋輔さんの演奏にぶっ飛んだ。

1969年に活動を始めた山下洋輔トリオは83年に解散し、その後、山下さんはソロ活動を始めた。

85年に発売された「ラウンド・ミッドナイト」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」「スイングしなけりゃ意味がない」などのスタンダード・ナンバーで飾られた山下さんのCD『スイングしなけりゃ意味がない』を聴いたぼくは山下さんに会いに行った。

「アメリカにジャズの墓参りの旅に行きましょう。ヨーロッパでは有名な山下さんですが、まだ、ジャズの生まれ故郷アメリカでほとんど演奏をしていない。一度、キッチリと落とし前をつけに行きましょう。いわば道場破りの旅です」と誘うと山下さんは快諾してくれた。

ニューオリンズを起点に、セントルイス、カンザスシティ、シカゴ、ニューヨーク。
800万の制作費をかけた一ヶ月に渡る旅の収穫はCD『センチメンタル/山下洋輔』、レーザー・ディスク『ライブ・アット・スウィート・ベイジル』、雑誌EMMA連載後に文藝春秋から単行本、後に文庫本として発売された爆笑旅日記「アメリカ乱入事始め」。

山下さんはその当時ラヴェルの「ボレロ」を度々演奏した。
ライブ会場で山下さんの「ボレロ」を何度も聴き、『センチメンタル』にも収録したものの、中学の音楽の時間に聴いて以来「ボレロ」を聴いてなかったので、山下さんのボレロと正調「ボレロ」とを聴き比べようとクラシック好きの友人に相談した。

「ねえねえ、樹郎ちゃん教えてちょうだいよ」

ってなところで、本日は店じまい。
この続きはまた明日。


本日のキーワード
・ウィンダム・ヒル・レコード

・「スリランカの悪魔祓い」上田紀行著

・現在絶版の「アメリカ乱入事始め」ですが、こちらでお読み頂けます。

「アメリカ乱入事始め」山下洋輔著

CD『センチメンタル』は絶版ですので、こちらiTunesで。

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