預言者
文・あかいししょーこ
19.05.19(日)
〜ウエサク祭に寄せて〜


(とうとうまぎれ込んだ、人の世界のツェラ高原の空間から天の空間へふっとまぎれこんだのだ。)私は胸を躍らせながら斯う思いました。

ここではあらゆる望みがみんな浄められている。願いの数はみな寂められている。重力は互に打ち消され冷たいまるめろの匂いが浮動するばかりだ。


やっぱりツェラの高原だ。ほんの一時のまぎれ込みなどは結局あてにならないのだ。


斯う私は自分で自分に誨えるようにしました。けれどもどうもおかしいことはあの天盤のつめたいまるめろに似たかおりがまだその辺に漂っているのでした。


そして私はまたちらっとさっきのあやしい天の世界の空間を夢のように感じたのです。


(こいつはやっぱりおかしいぞ。天の空間は私の感覚のすぐ隣りに居るらしい。


みちをあるいて黄金いろの雲母のかけらがだんだんたくさん出て来ればだんだん花崗岩に近づいたなと思うのだ。


ほんのまぐれあたりでもあんまり度々になるととうとうそれがほんとになる。


(きっと私はもう一度この高原で天の世界を感ずることができる。)私はひとりで斯う思いながらそのまま立っておりました。


〜宮沢賢治「インドラの網」より編纂させていただきました〜


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